2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

日本を紳士の国に変える 第121幕

何気ない日常を文章に書き起こす。 すると途端に情景が哀愁を持ち、美しさを放つ。 どんな雑踏の中に居ようとも、それは美しさを放つ。 朝日が昇り次第に街が、黄色の光に包まれる。 仕事に向かっている車の音。 小鳥のさえずり。 どんな音楽よりも綺麗に聞…

日本を紳士の国に変える 第120幕

梅雨の中休だろうか。 雨雲の姿は影を潜め、 小さな太陽が僕たちを照り付けている。 これから来る本格的な夏に向けてのウォームアップだろうか。 一般的にスーツが売れないとされている時期らしい。 それはそうだと思う。 40度近くなる気温の中スーツを着て…

日本を紳士の国に変える 第119幕

私はオーダースーツを売って何をしたいのか。 最近は専らその事を考えている。 情熱を持って仕事をするには避けては通れない道だ。 オーダースーツを売って終わりになっていないか。 ただオーダースーツを売るだけなら誰にだってできる。 私はただオーダース…

日本を紳士の国に変える 第118幕

そこの家の人は快く僕を招き入れた。 僕に若いのに凄いねと言った。 僕には何のことか分からなかったけど、嫌な感じはしなかった。 むしろ優越感を感じたほどだ。 その人は僕に牛乳とパンをくれると、 頑張ってとだけ言って家の外に出てまた歩き始めた。 そ…

日本を紳士の国に変える 第117幕

果たして正解だったのだろうか。 あの時、二手に分かれた道の前で酷く悩んだ。 僕は左の道を選んだ。 僕の友達は右の道を選んだ。 「健太君が右に行くなら、僕も右に行こう。」と雄二が言った。 「涼太は左に行くの?」聡が僕に聞いた。 「うん、こっちの方…

日本を紳士の国に変える 第116幕

そんな私に自信がつくようなスーツをお願いした。 「値段はどうされますか?」 「ん?ん?」 「このお店値段がついていないんですよ。以前の社長の意味不明な設定なんです。」 「それでチラシに値段が書いていなかったんですね。合点がいきました。値段です…

日本を紳士の国に変える 第115幕

果てしなく広がる広大な海を前に、どうしようもなくもどかしい気持ちになる。 心地良く吹く風を肌に感じながらただ呆然と海を眺める。 遠くにある島に些細な興味を抱いたりして。 風を受けながら空を舞うウミネコ。 白い砂浜がなだらかなカーブを描きながら…

日本を紳士の国に変える 第114幕

「実は私もずっとそれを考えているんです。社長がこの会社でやりたかった事。叶えたかった夢を。」 「ははっ、羨ましいな。」 「何がです?!」 「子供の頃、カブトムシを目の前にした子供のような顔をしてるんだもん。いい意味でだよ。大人になって心が踊る…

日本を紳士の国に変える 第113幕

「おはようございます、チラシを見て来たんですけど。」 「あぁ!あのチラシですね!ありがとうございます!」 とても印象のいい若者だった。 「下のあの空間はなんですか?」 「前の社長が大変な変わり者でして、世界を平和にすることが目標だったんです。 …

日本を紳士の国に変える 第112幕

休日の私は大分市にあるスーツ屋を訪ねていた。 チラシが印象的だったのと、 どうせスーツを着るしなと軽い考えだった。 一つ不安があるとすれば、値段の記載が無かった事。 まぁそんな飛び抜けた価格なら断ればいいと思っていた。 雨が上がったあとの濡れた…

日本を紳士の国に変える 第111幕

将来を考えると不安になる。 彼女もいないし、結婚もできるか分からない。 友達は彼女もいて趣味もあって充実しているように感じる。 自分だけパッとしない人生を生きているなと思う。 漠然と”変えたい”と願うけど、 何を変えたらいいのかが分からない。 そ…

日本を紳士の国に変える 第110幕

今年が始まって五月も下旬。 あっという間に今年も終わりそうだ。 皆さんは元旦に決めた目標を覚えているだろうか? 私の今年の目標は 「激動の一年にする。」だ。 順調に激動の一年になっている。 24歳でこのような経験をできていることが 将来振り返ったと…

日本を紳士の国に変える 第110幕

九州は梅雨入りしたのかな。 連日断続的に強い雨が降っている。 そして時折、強い日差しがアスファルトを焼く。 本格的に迎える夏に既にうんざりしている。 仕事柄もちろんスーツを着ている。 真夏にジャケットは羽織れない。 特に私は暑がりだから。 スーツ…

日本を紳士の国に変える 第109幕

ドアを開けると暑い雲が空を覆っていた。 一応傘を持っていっておこうと、 下駄箱の下にホコリを被っていたビニール傘を引っ張り出した。 大きなあくびをしながら駅へと足を進める。 職場には後輩もいて一応上司として指導している。 嫌われている上司もいる…

日本を紳士の国に変える 第108幕

本日はお客様と打ち合わせでした。 どういったスーツを作りたいのか、 そのスーツをどういった場面で着用し、 どういった印象を人に与えたいのかをしっかりとミーティングしました。 お客様との話し合いで、好みがわかったり、 スーツに何を求めているのかが…

日本を紳士の国に変える 第107幕

今日はお客様のスーツの受け渡しでした。 満足していただけて私も嬉しかったです。 やはりピッタリのスーツを提供できると嬉しいです。 初めてオーダーしていただいたお客様だったのですが、 オーダーが楽しいと言ってくれたので 私の仕事ができたのかなと思…

日本を紳士の国に変える 第106幕

鼓膜を直接叩くように目覚まし時計が6時を知らせた。 また憂鬱な一日が始まる。 重たい体を持ち上げて、トイレへ向かう。 心の憂鬱とは裏腹に小便だけは勢いよく出ている。 洗面台で顔を洗うと少しだけ体が軽くなる。 昨日も着ていたスラックスに足を通して…

日本を紳士の国に変える 第105幕

時間って面白いなと最近思っています。 何故かと言うと、 過去の時間はとても早く、 現在流れている時間はとてもゆっくりだからだ。 どっちが正しい時間の速さなのだろう。 私は過去だと思った。 時間は猛烈に速いスピードだと思う。 私の好きな言葉に 「思…

日本を紳士の国に変える 第104幕

雨が降っている。 ヨーロッパの国では雨が降っていても 少々の雨では傘をささずにフードでやり過ごすらしい。 雨を感じられるようにとテレビで言っていた。 とても好きな感性だなぁと日本男子の私は思った。 そこで私は気づいた。 スーツの話題を一つも書い…

日本を紳士の国に変える 第103幕

オーダースーツを月に105着売っている人がいる。 私が販売している価格より10,000円ほど安い。 以前の私なら質が悪いんじゃない?とか それだけ安ければ売れるよ。とか言っていたと思う。 絶対に売れない。 今の私が同じ価格で勝負したとしても100%負けるだ…

日本を紳士の国に変える 第102幕

沢山の人のお陰で今の私がいると思う。 決して一人ではなかったと思う。 言い方は冷たくなり、失礼にもなるが、 私を支えてくれるのは”他人だ” 沢山の他人に支えられて今の私があると思う。 「情けは人の為ならず」という言葉がある。 幼い頃、父に本当の意…

日本を紳士の国に変える 第101幕

朝、夕は冷えるが日中は暑いと感じる季節になった。 この時期の夕暮れは好きだ。 明るくも暗くもない時間。 電気を付けないと暗いが、 電気を付けてしまうと、風情を奪ってしまうように感じる。 パンツ一丁でいると気持ちが良い。 お腹にドシっとついた脂肪…

日本を紳士の国に変える 第百幕

私の部屋には二つの花瓶がある。 その花瓶には当たり前だが花が生けてある。 しかし生きている花ではない。造花だ。 100円ショップで購入した。 100円とは思えないクオリティを発揮して部屋を華やかにしている。 枯れないし、葉も落ちないし、水もいら…

日本を紳士の国に変える 第九十九幕

今日はお客様のスーツの受け渡し日だった。 毎度の事ながらドキドキする。 採寸が間違っていないか。 ちゃんとお客様の要望通り仕上がっているか。 ドキドキの時間を過ごしてきた。 無事にピッタリのスーツを提供することができた。 いや、ちょっと待てよ。 …

日本を紳士の国に変える 第九十八幕

小説は少しお休みする。 私は今年で24歳になる。 今年の一月に会社を辞めて、今は個人でオーダースーツを売っている。 現状は知人や応援してくださる方のお陰で何とか生活ができている。といった感じだ。 私には大切な彼女がいる。 狭い部屋で二人で生活して…

日本を紳士の国に変える 第九十七幕

久しぶりに実家に帰るとリビングで父がビールを飲んでいた。 「お、帰ってきたのか。どうな。仕事の調子は。」 「まぁ何とか頑張っているけど、先の事は全く分からないよ。」パッとしないことを言いながら、炬燵に足を伸ばした時、何やら足に違和感があった…

日本を紳士の国に変える 第九十六幕

「さっきお客さんが仰った事も間違いではありませんが、僕は違うと思うんです。ARMORsのスーツは自分の中から自信を漲らせるものだと思います。ですから、スーツ自体がカッコ良くても本質的なところが変わらないとダメだと思うんです。だから、ARMORsのスー…

日本を紳士の国に変える 第九十五幕

野田の席は、今は僕の席。 ARMORsに来るお客はいつだって何かを求めている。 以前の僕みたいに 自分の人生を他人に歩かせているような、 そんなお客が来る。 野田はどんな想いでスーツを提供していたのか、 その事を毎朝、野田の席に座って考える。 朝の7時…

日本を紳士の国に変える 第九十四幕

物語はここまでで第一章となります。 野田の設立したARMORは遼兵が代表となりARMORsになります。 ARMORsはこれからも野田の意思を継ぎ 沢山の人を本当の意味で助けることができる そんなスーツを提供する。 次章からはARMORsのこれからの活動を書いていきま…

日本を紳士の国に変える 第九十三幕

朝の散歩を始めて一年くらい経った。 時間帯が一緒なのだろう 毎日会う犬の散歩をしているおじさん。 最初は挨拶を交わすだけだったが、 今では立ち話をするような関係になった。 「おじさん、僕、色々あって社長になります。」 「そーか。本当、色々あった…