日本を紳士の国に変える 第九十七幕
久しぶりに実家に帰るとリビングで父がビールを飲んでいた。
「お、帰ってきたのか。どうな。仕事の調子は。」
「まぁ何とか頑張っているけど、先の事は全く分からないよ。」パッとしないことを言いながら、炬燵に足を伸ばした時、何やら足に違和感があった。」
僕が驚いた顔で父を見ると、ニコッと笑った。
「気づいたか。新しい家族だ。」そう言うと炬燵の中に手を伸ばして、毛深い枕のようなものを引っ張り出した。
「犬だ。」
「いや、猫だろ。」父は大きな声で笑った。くだらない。
「名前は決まってるの?」
「だごさく、だ。」父はどこかカッコつけていた。
「だごさく?なんか、古くない?」
「お前も母さんと一緒で分かってないな。」
こいつはこの名前喜んでるんだと、頭を撫でているが、その手に思い切り噛み付いていたから、それほど気に入っていないのだと思う。
父とこうして馬鹿みたいな話をしたのは、いつ以来だろうとふと思った。
前の職場にいる時は何となく父とこうして話したことは少なかった。
仕事が原因かは分からないが、僕はそうだと感じた。
その日は父と母とゆっくり話した。
父も母も楽しそうだった。