日本を紳士の国に変える 第九十五幕
野田の席は、今は僕の席。
ARMORsに来るお客はいつだって何かを求めている。
以前の僕みたいに
自分の人生を他人に歩かせているような、
そんなお客が来る。
野田はどんな想いでスーツを提供していたのか、
その事を毎朝、野田の席に座って考える。
朝の7時にお客がきた。
その人はくたびれたスーツを着ていた。
スーツを作ってくださると聞いてきたのですが。
と恐る恐る聞くみたいだった。
「はい、作りますよ。なぜARMORsのスーツが必要なんですか?」
「私、会社をクビになりまして。奥さんにも愛想尽かされて。こんなはずじゃなかったんですけどね。もっとバリバリ仕事して、広い家に住んで、結婚して、子供ができて。」
「、、、、、。」
「上司には無理な仕事押し付けられて、奥さんは家事はロクにしないくせに、私に文句ばっかり。本当毎日が疲れました。」
「お客さんはARMORsのスーツで何ができると思いますか?」
「何ができるですか?新しい仕事を探すのにスーツが必要でして、、。」
「なぜ既製服じゃなくてARMORsのスーツを選んだんですか?」
「いいスーツを着たら、カッコよく見えるし、仕事が出来そうに見えるし、奥さんも少しは見方が変わるかも、と思いまして。」
僕は野田だったら何て言うんだろうと考えながら、
質問をしていった。