日本を紳士の国に変える 第九十七幕

久しぶりに実家に帰るとリビングで父がビールを飲んでいた。

 

「お、帰ってきたのか。どうな。仕事の調子は。」

 

「まぁ何とか頑張っているけど、先の事は全く分からないよ。」パッとしないことを言いながら、炬燵に足を伸ばした時、何やら足に違和感があった。」

 

僕が驚いた顔で父を見ると、ニコッと笑った。

 

「気づいたか。新しい家族だ。」そう言うと炬燵の中に手を伸ばして、毛深い枕のようなものを引っ張り出した。

 

「犬だ。」

 

「いや、猫だろ。」父は大きな声で笑った。くだらない。

 

「名前は決まってるの?」

 

「だごさく、だ。」父はどこかカッコつけていた。

 

「だごさく?なんか、古くない?」

 

「お前も母さんと一緒で分かってないな。」

 

こいつはこの名前喜んでるんだと、頭を撫でているが、その手に思い切り噛み付いていたから、それほど気に入っていないのだと思う。

 

父とこうして馬鹿みたいな話をしたのは、いつ以来だろうとふと思った。

 

前の職場にいる時は何となく父とこうして話したことは少なかった。

 

仕事が原因かは分からないが、僕はそうだと感じた。

 

その日は父と母とゆっくり話した。

 

父も母も楽しそうだった。

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日本を紳士の国に変える 第九十六幕

「さっきお客さんが仰った事も間違いではありませんが、僕は違うと思うんです。ARMORsのスーツは自分の中から自信を漲らせるものだと思います。ですから、スーツ自体がカッコ良くても本質的なところが変わらないとダメだと思うんです。だから、ARMORsのスーツは値段が決まっていなくてお客様が価格を決めるんだと思います。すみません、長々と。」

 

「若いのにしっかりされていますね。」頭を掻きながら苦笑した。

 

「いえ、恩師ならこう答えると思うんです。」

 

「人生上手くいかないと、過去ばっかり振り返って足下しか見えなくなるんですよね。。

 

よし!!今までで一番良いスーツを作ってもらおう!!16万円でお願いできるかな?!」

 

「かしこまりました!!!一緒に良いスーツを作りましょう!!!」

 

 

高価なスーツはそれはかっこいいし、周りとの優越感に浸れるだろう。

だけど野田の意思は違う。

本当に自分の人生と向き合った人にスーツを提供したい。

また、向き合う為にスーツを提供してきたんだと思う。

 

僕はその意思を継いでARMORsを存続させたい。

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日本を紳士の国に変える 第九十五幕

野田の席は、今は僕の席。

 

ARMORsに来るお客はいつだって何かを求めている。

 

以前の僕みたいに

 

自分の人生を他人に歩かせているような、

 

そんなお客が来る。

 

 

野田はどんな想いでスーツを提供していたのか、

 

その事を毎朝、野田の席に座って考える。

 

 

朝の7時にお客がきた。

 

その人はくたびれたスーツを着ていた。

 

スーツを作ってくださると聞いてきたのですが。

 

と恐る恐る聞くみたいだった。

 

「はい、作りますよ。なぜARMORsのスーツが必要なんですか?」

 

「私、会社をクビになりまして。奥さんにも愛想尽かされて。こんなはずじゃなかったんですけどね。もっとバリバリ仕事して、広い家に住んで、結婚して、子供ができて。」

 

「、、、、、。」

 

「上司には無理な仕事押し付けられて、奥さんは家事はロクにしないくせに、私に文句ばっかり。本当毎日が疲れました。」

 

「お客さんはARMORsのスーツで何ができると思いますか?」

 

「何ができるですか?新しい仕事を探すのにスーツが必要でして、、。」

 

「なぜ既製服じゃなくてARMORsのスーツを選んだんですか?」

 

「いいスーツを着たら、カッコよく見えるし、仕事が出来そうに見えるし、奥さんも少しは見方が変わるかも、と思いまして。」

 

 

僕は野田だったら何て言うんだろうと考えながら、

質問をしていった。

 

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日本を紳士の国に変える 第九十四幕

物語はここまでで第一章となります。

 

野田の設立したARMORは遼兵が代表となりARMORsになります。

 

ARMORsはこれからも野田の意思を継ぎ

 

沢山の人を本当の意味で助けることができる

 

そんなスーツを提供する。

 

 

次章からはARMORsのこれからの活動を書いていきます。

 

ただスーツを提供するのではなく

 

そのスーツで誰かの人生に影響を与える

 

そんなお店に遼兵がしていくことでしょう。

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日本を紳士の国に変える 第九十三幕

朝の散歩を始めて一年くらい経った。

 

時間帯が一緒なのだろう

 

毎日会う犬の散歩をしているおじさん。

 

最初は挨拶を交わすだけだったが、

 

今では立ち話をするような関係になった。

 

「おじさん、僕、色々あって社長になります。」

 

「そーか。本当、色々あったんだろうな。本当に色々な。本当の意味の色々だな。」

 

「何回もうるさいですよ。そんな色々ないと有り得ないですかね。」

 

「だってつい最近まで引きこもりクソニートだったでしょ。」

 

「めちゃくちゃ悪口言いますね。でも、色々ありました。」

 

「まぁ色々あるからな、人生は。だから面白いんだけどな。オーダースーツだろ?お店の名前は決めてるのか?」

 

「はい。前の名前を少し使うんですけど。”ARMORs”です。」

 

「アーマーズか。いいな。かっこいい。んで、どこに前の会社の名前を入れてるの?」

 

「ARMORが前の会社の名前です。」

 

「大丈夫か。小文字のsだけで。心配だぞ。」

 

「大丈夫です。尊敬する人が付けた大切な名前です。僕の力は微力です。少しでも支えられたらいいんです。」

 

「良い目をしてるな。輝いてる。頑張れ。応援する。」

 

そういって犬のリードを引っ張って歩いて行った。

 

朝日が気持ちがいい。冷たい風が体をすぼめさせる。

 

いつもより、大股で長い時間歩いた。

 

”ARMORs”の始まりだ。

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日本を紳士の国に変える 第九十二幕

遼兵君へ

 

遼兵君にお願いが二つあります。

 

一つ目は聡美をよろしくお願いします。

親戚もなく、友達もあんまりいないと思うから買い物とか付き合ってください。

 

二つ目は僕の会社”ARMOR”をよろしくお願いします。

遼兵君には伝わっていると思うけど、

ARMORはお洒落なスーツを提供する会社じゃなくて

人を助けるスーツを提供する会社です。

 

僕が助けることができなかった人達がまだまだ沢山います。

 

遼兵君ならできます。

 

僕は天国でお酒でも飲んで見守っています!!!

 

          野田

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日本を紳士の国に変える 第九十一幕

その日の深夜、聡美さんの携帯が鳴った。

 

エレベーターの中は静寂に包まれた。

 

聡美さんは冷静そうに見えた。

 

病室に入ると、担当医と看護師がいた。

 

僕たちが来たのを確認して、病室を出ていった。

 

「あなたっ!!!あなた!!!私よ!!!来たよ!!」

 

涙が真っ白な布団を濡らしていく。

 

「遼兵君も来てるよ!!起きて!!!」

 

僕の目から、次から次へと涙が溢れてきた。

 

「野田さん!!起きてください!!!」

 

野田の体に繋がった何本ものチューブ。

 

ベッドの横に置いてある、大きな機械が野田の命を表示していた。

 

小さな波を打っていたが、

 

最後は平行線になった。

 

0が表示されて、高い音が病室に響いた。

 

聡美さんは野田に抱きついた。

 

強く抱きしめていた。

 

顔は涙と鼻水でびしょびしょにして抱きしめていた。

 

「がんばったね。がんばったね。がんばったね。」

 

僕はベッドから少し離れたところに立って

 

ボロボロと涙を流していた。

 

とめどなく流れてくる涙を僕は止めなかった。

 

病室の扉が開き、誰かが僕の頭を乱暴に撫でた。

 

父だった。僕がLINEを入れていた。

 

父の顔は既にグショグショに濡れていた。

 

肩をひくつかせながら、僕の頭を撫でた。

 

三人で野田を囲んで泣いた。

 

とにかく泣いた。

 

 

 

野田は54歳だった。

 

54年の人生に幕を下ろした。

 

沢山の人にスーツを通じて勇気を与えてきただろう。

 

何人もの人が野田に助けられただろう。

 

 

野田が僕に手紙を残していた。

 

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