日本を紳士の国に変える 第九十三幕
朝の散歩を始めて一年くらい経った。
時間帯が一緒なのだろう
毎日会う犬の散歩をしているおじさん。
最初は挨拶を交わすだけだったが、
今では立ち話をするような関係になった。
「おじさん、僕、色々あって社長になります。」
「そーか。本当、色々あったんだろうな。本当に色々な。本当の意味の色々だな。」
「何回もうるさいですよ。そんな色々ないと有り得ないですかね。」
「だってつい最近まで引きこもりクソニートだったでしょ。」
「めちゃくちゃ悪口言いますね。でも、色々ありました。」
「まぁ色々あるからな、人生は。だから面白いんだけどな。オーダースーツだろ?お店の名前は決めてるのか?」
「はい。前の名前を少し使うんですけど。”ARMORs”です。」
「アーマーズか。いいな。かっこいい。んで、どこに前の会社の名前を入れてるの?」
「ARMORが前の会社の名前です。」
「大丈夫か。小文字のsだけで。心配だぞ。」
「大丈夫です。尊敬する人が付けた大切な名前です。僕の力は微力です。少しでも支えられたらいいんです。」
「良い目をしてるな。輝いてる。頑張れ。応援する。」
そういって犬のリードを引っ張って歩いて行った。
朝日が気持ちがいい。冷たい風が体をすぼめさせる。
いつもより、大股で長い時間歩いた。
”ARMORs”の始まりだ。