日本を紳士の国に変える 第四十一幕

清々しく晴れ、不気味な程大きな入道雲が辛うじて浮かんでいる。

 

太陽は光を投げ付けてくる様に熱い。

 

軽トラがようやく通るくらいの畦道に仁王立ちで待っている。

 

蝉が何処かで激しく鳴いている。

 

畦道の入り口に君が見えた。

 

僕の小さな心臓は大きな音を立て蝉の鳴き声とこだまする。

 

真っ白のワンピースに麦わら帽子の君。靴は赤かな。

 

近づいてくる君を僕は当然の事のように待つ。

 

目の前に来た君は何も言わず、笑顔で僕を見る。

 

虫取りカゴを君に渡し、蝉を取りに行くぞ。という。

 

君は笑顔で虫取りカゴを肩に掛け、うん!と頷く。

 

君の返事を確認した僕はナポレオンの様に

 

虫取り網を空高々と掲げ得意気に君の前を歩く。

 

もちろん今日の事は誰にも言っていない。

 

だから目の前から歩いてくる、

 

いつものメンバーは偶然の不運だろう。

 

いつもの僕の位置には友達の安田がいる。

 

遠目からでもニヤニヤと笑っているのが分かる。

 

蝉はずっと騒がしい。

 

変な緊張感が襲い掛かる。

 

安田がメンバーの方を振り返り、踵を返す。

 

メンバーもそれに合わせ、

 

名残惜しそうに目を離そうとしない奴もいたが

 

全員が踵を返して、畦道を帰って行った。

 

安田の拳が青々とした空に挙がる。

 

下を向いた君にぶっきらぼうに「行ったよ」という。

 

汗ひとつ無い君の顔を見ると、頬が緩む。

 

珍しい蝉を捕まえて、怯える君に説明してやろう。

 

幼い僕は心に誓う。

 

 

自分をアピールするスーツも大切ですが、

思い出に残る

一着のスーツを提供することも大切だと思います。

スーツが思い出させてくれる。そんなスーツを。