日本を紳士の国に変える 第七十一幕

 クーラーのついた事務所で配送の手配をしていると、上司の林に呼ばれた。

「これお前だろ。入社して二年も経つのに、まだ荷物の仕分けもできないの?」眉を見事なほど八の字に折り曲げ、耳につく口調で言った。

「すみません。」僕の謝罪を聞く事なく事務所へ引き返して行った。僕は荷物を半ば投げるように移動させた。そこをたまたまタバコを吸いに出てきた、林に見られた。

「何なの、自分が仕事できないから荷物にあたってるの?」

「すみません。」今度は大袈裟なため息でかき消された。

「別に良いんだけどさ、そんな簡単な事もできないうえに、指導されたら荷物に当たる。って、子供じゃないんだから。」嫌に微笑みながら言ってきた。

 

 「あの林の野郎、次なんか言ってきたらぶん殴ってやる!大体、会社自体が古いんだよ、考え方が!荷物なんて機械で仕分けしてるところがほとんどだぜ?!どー思うよ!」

水滴を垂らしながら残りわずかなビールを飲み干して、友達の田辺に聞いた。

「最近ストレス溜まってんなー。もう名前覚えちまったよ。天パの林だろ。事務の乗田バーさんだろ。加齢臭の帝王迫田だろ。」

「お前しかいないんだよ。聞いてくれる相手がよーー。」

「職場を変えてもいいんじゃないか?!」

「いや、親父の紹介だからなぁ。」

 

 フラフラと夜道を歩いて帰る。

お酒の飲み過ぎと、惨めな心情が相まってお手本の様なため息が出た。

どこで道を間違ったんだろう。ポツリと口をつく。