日本を紳士の国に変える 第八十一幕
野田から言葉をもらって以来、僕には朝の日課ができた。
部屋の窓際にある鏡の前に立って
今日自分が何をやりたいのか、
毎朝、自問する時間を設けた。
僕は働いていた頃から貯金だけはずっとしていたので、
やりたいと思ったことはある程度できた。
旅行に行きたいと思った日は
目的地を決めずに思いつくまま旅をした。
会いたいと思った友人がいたので
東京にいたが
朝に家を出て、東京に着いてから
友人に連絡して驚かせたりもした。
朝思いついたことをずっとやっていると
案外早い段階でやりたいことがなくなっていた。
働かないとなと思う日々が続いた。
しかし何をしたらいいのかが分からなかった。
やりたい事も頭に浮かんできたりしていたが
できない理由探しをしている自分がいた。
”野田”に会いに行こうと思い立ったのは
そんな日々を続けて一週間くらい経ってのことだった。
僕は自分の車で大分に向かっていた。
以前行った時よりは遅く出発したが
朝の冷たくて気持ちの良い風を
車の中に滑り込ませながら
流行りの曲を口ずさみながら
高速道路を飛ばした。
”野田”に会ったら、
何か霧が晴れるような気がしていた。