日本を紳士の国に変える 第九十一幕

その日の深夜、聡美さんの携帯が鳴った。

 

エレベーターの中は静寂に包まれた。

 

聡美さんは冷静そうに見えた。

 

病室に入ると、担当医と看護師がいた。

 

僕たちが来たのを確認して、病室を出ていった。

 

「あなたっ!!!あなた!!!私よ!!!来たよ!!」

 

涙が真っ白な布団を濡らしていく。

 

「遼兵君も来てるよ!!起きて!!!」

 

僕の目から、次から次へと涙が溢れてきた。

 

「野田さん!!起きてください!!!」

 

野田の体に繋がった何本ものチューブ。

 

ベッドの横に置いてある、大きな機械が野田の命を表示していた。

 

小さな波を打っていたが、

 

最後は平行線になった。

 

0が表示されて、高い音が病室に響いた。

 

聡美さんは野田に抱きついた。

 

強く抱きしめていた。

 

顔は涙と鼻水でびしょびしょにして抱きしめていた。

 

「がんばったね。がんばったね。がんばったね。」

 

僕はベッドから少し離れたところに立って

 

ボロボロと涙を流していた。

 

とめどなく流れてくる涙を僕は止めなかった。

 

病室の扉が開き、誰かが僕の頭を乱暴に撫でた。

 

父だった。僕がLINEを入れていた。

 

父の顔は既にグショグショに濡れていた。

 

肩をひくつかせながら、僕の頭を撫でた。

 

三人で野田を囲んで泣いた。

 

とにかく泣いた。

 

 

 

野田は54歳だった。

 

54年の人生に幕を下ろした。

 

沢山の人にスーツを通じて勇気を与えてきただろう。

 

何人もの人が野田に助けられただろう。

 

 

野田が僕に手紙を残していた。

 

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