日本を紳士の国に変える 第七十三幕

 仕事が終わって、帰りの車中で転職のことを考えた。

しかし勉強もできず、体力に自信があるわけでもない。

コミュニケーションが得意でもないし、リーダーシップがあるわけでもない。

今の仕事を辞めて、他にいい仕事につけることなど到底考えられなかった。

 

 家に着くと父がテレビを見ながらビールを飲んでいた。

父は工場に勤めている。中肉中背の週に一回草野球をする、どこにでもいる中年のおじさんだ。しかし怒ったら町で一番怖いと思う。

一度小さい頃兄とふざけていて窓ガラスを割った時は、右の頬が火を吹くほど熱く火照り、学校の校庭まで連れて行かれて真っ暗になるまで走らされた。

今の時代でやっていたら、間違いなく通報されて刑務所行きだ。

 

 「最近仕事はどうだ?」いきなりの父の質問に驚いて、米粒を鼻の奥のどちらからも取れないところに引っ掛けた。

鼻をかむと勢いよく米粒が飛び出した。

「まぁ普通だよ。」普通ってなんだよ。自分でも思った。

「普通ってなんだ?」それきた。

「順調って程でもないけど、特別悪くもない感じかな。」これだ。

「順調じゃないのか?」おっと、これは想定外。

「うん、まぁ、転職も考えようかなーなんて、笑」ジャブだ。

「いいんじゃないか。」ん?変だな。伸びのあるストレートをかまされるかと思ったが、。

「転職してもいいの?」

「お前は24歳になっても自分の人生を父親に任せるのか?もっと自分の人生に責任を持ちなさい。」

 

 

 初めて父親をカッコ良いと感じた日は僕が転職する事を決めた、

人生のターニングポイントになった。

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