日本を紳士の国に変える 第二十五幕
私はMacBookを起動させた。
子供の頃よく遊んだ、広大だった海を目の前に。
あの頃はとても遠く見えた孤島も、
今は泳いで行けそうな気がしてくる。
海の静かな波の音とは対照的に
黄色がかった砂浜は物音を立てず
凛とした表情で海の前に鎮座する。
私の後ろからそっと撫でるように吹く風は
大きな松の木をほのかに揺らしている。
鳩やカラス、名前の知らない鳥の泣き声。
日々の喧騒を束の間だが忘れてくれる。
しかし、黄色がかった砂浜を一歩でも出れば、
日々の悩ましい現状が頭の中を独占する。
あの頃は自信があった。
何の根拠もありはしないのに、
自分は特別な存在なんだと信じて疑わなかった。
無駄に光っている車を乗りこなし、毎日を優雅に過ごすのだと
信じて疑わなかった。
海に呆気を取られながら、砂浜を歩く女性。
どちらが散歩しているのか疑問を抱くほど、犬にリードを引っ張られて歩く、熟年の夫婦。
遠くの山の上で豪快に回る、風車。
あぁ少し寒くなってきた。
海の顔を風がさする。
リードを外した柴犬が長い舌を出してこっちを見ている。
たまには小説だけの日もあっていいかと、、、笑