日本を紳士の国に変える 第八十四幕
「野田さん、とても素敵です。」僕の口から漏れたようにでた。
野田の顔は強張らせて、「俺はそっちっ気はないんだ。」と言った。
僕の言い方も悪かったが、
スーツに見惚れてしまっていた僕の反応が
とても嬉しかったようで、照れ隠しみたいだった。
”ARMORのスーツは着ている人に自信を与える”
”ARMORのスーツは着ている人に勇気を与える”
”ARMORのスーツは着ている人に希望を与える”
スーツの胸ポケットに入った
メッセージカードにそう書かれていた。
それともう一つ。
”このスーツは貴方の鎧になります
どんなに苦しい時も
貴方の盾となります
戦いに何度負けても、
必ず立ち上がれ”
今日はありがとうと父が言った。
野田は僕の方を見て「若いうちの苦労は買ってでもしなさい。」と言った。
店を出て野田がいつものように見えなくなるまで手を振っている。
僕はスーツを専用の袋に入れて大切に持っていた。
そこで僕は父に質問をした。「スーツのお金って払ったの?」
「何でお前のスーツを俺が買わなきゃいけないんだよ。」
嘘だろ。と思った。
「えっっ!だってめちゃくちゃ高いでしょ!」
「お前が最初に野田に言っただろ?いくらで自信を買えるかって。」
「??10まんえん?」
「あいつの店は変わってんだよ。最初は値段がついてないんだ。お客さんが自分で値段をつけるんだよ。」ニコッと笑った。
僕はとんでもない人と話していたように思った。
僕もいつかあんな大人になりたいと思った。
帰り道は父のお気に入りの音楽を二人で熱唱しながら
時々、父と野田の昔の話を聴きながら帰った。